女性として凛として生きたいと思わせる、素敵な本を読みました。
『ピンヒールははかない』佐久間裕美子
めいっぱい生きる。
NYブルックリンひとり暮らし。どこまでも走り続けたい。ニューヨークで暮らすようになって、もうすぐ20年になる。
ここでは「シングル=不幸」と思わせるプレッシャーがない。
周りには、果敢に恋愛や別れを繰り返しながら、社会の中で生き生き
と頑張っている女性が山ほどいる。一生懸命生きれば生きるほど、
人生は簡単ではないけれど、せっかくだったら、フルスロットルで
めいっぱい生きたい。だから自分の足を減速させるピンヒールははかない。
大都会、シングルライフ、女と女と女の話。
ニューヨークのブルックリンで暮らす佐久間さんの本。
佐久間さんはアメリカ文化の変化を描いた『ヒップな生活革命』の著書としても知られている方。
今回の著書『ピンヒールははかない』、ニューヨーカー、アメリカンと日本人の比較に偏った内容なのかな〜と思ったけど、そんなことは全然ありませんでした。
ニューヨークに住む佐久間さん自身、佐久間さんを取り巻く知人友人たちのストーリーが中心の内容ではあるんだけど、語られている内容は古今東西問わず当てはまる内容。
今フランスに住む私も、日本に住んでいた時に感じていた息苦しさ、それを上手い具合に言語化してくれています。
話をしながら、ちょっと前に日本で目にして衝撃を受けた女性誌の特集のコピーを思い出した。 「幸せだって思われたい」 自分の心と付き合っていくだけでも大変なのに、その幸せが他人に紐付いているなんて、なんて恐ろしいことだろう。 どこどこのなんとかちゃんは私立の名門校に受かったらしい、お医者さんと結婚したらしい、田園調布に家を買ったらしい、かわいい子供を産んだらしい──私が育ってきた環境には、人がうらやましがる(妬む)ような環境設定と、誰かをうらやましいと思う気持ちがいつも渦巻いていて、けれど、自分を他人の状況設定と比べても、ネガティブな感情にしかつながらないことは子供心にもわかった。そしてその嫌悪感が、この手の感情からできるだけ遠い場所に行きたいと、海外を目指すことにもつながった。ニューヨークで自分の周りを見回すと、みんなが選ぶ人生があまりに多様すぎて、比較しようにもしづらいから、こういう気持ちとは無縁で生きることができる。
そうなんですよ。
なかなか気付けないことだけど、
「幸せだって思われたい」
他者からの評価を気にしながら生きるって、恐ろしいことなんですよ。
色んな民族が交わって、
色んな価値観が存在する中で生活すると、
他人と比較しようにもできなくて、
ねたみやうらやましがる気持ちとは無縁になるんですよね。
私もフランスに来て、こういう気持ちが驚くほどなくなりました。
日本にいた時は、そんなことも悩んでいたっけな〜と思い返されて懐かしい。
今は良い意味で、自己チューというか、
「自分にとってのベストは何なのか」について向き合うようになりました。
他人からの承認を求めて生きていくには、人生は短すぎる。結局、自分と付き合わなきゃいけないのは、自分なんだから。
そう。
人生はあまりにも短すぎます。
他人からの承認を求めて生きていくには、時間が足りなすぎる。
仕事、結婚、出産、離婚、死別、、、
女性が直面する人生の課題に色んな角度からとことん向き合ったストーリーで、読んでいるうちにいつの間にか自分自身の生き方も考えさせられます。
「幸福は、瞬間的に感じるもので、継続的な状態ではない」 それでも人間は、「継続的な幸せ」が可能であるという幻想を抱くし、それを目指して葛藤する。幸せとは、何かいいことがあったとき、美しいものに出会ったときに、瞬間的に感じる気持ちのことである。継続的な幸せなんてないのだと受け入れることができたら、他者からの承認欲求からも解放されるのかもしれない。
佐久間さん自信の言葉、佐久間さんを取り巻く家族や友人たちからの言葉、それがまるで読者の私たちに向けられて語られたかのように胸に刺さってきます。
もちろんまだ思い出して悲しくなって、泣いている日だってある。でも泣きたいときは、自分の感情は天気と同じだと思うことにしてる。晴天の日もあるんだから、雨の日があってもしょうがない。だから泣きたいときは泣けばいいんだよ
幸福、孤独、悲しみ、自信、、、
私たちにつきまとうあらゆる感情に対して、どう向き合えばいいのか。
決して答えが書いてあるわけではないけど、自然と向き合うようにしむけてくれる。
人生の辛いストーリーの中に、生きることに前向きになるヒントが隠されている。
ちょっと行き詰まった時、辛いことがあった時、ガッツを入れたい時、
背中をそっと押してもらえるような一冊です。
若いきゃぴきゃぴの人よりも、人生の荒波にのまれつつある、もしくは色々経験したあらゆる女性にオススメしたい本です。
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